カラフルに生きよう

知識より体の声を。情報より心の声を。自分の色を思い出し、人生の解像度をあげるためのブログ。

「稽古場の神様」を信じた話

むかしばなし。

役にたつことは書いてない。

 

22歳くらいのときかな。

とある劇団の公演に出演することになった。

ひとつの家族を中心に、いろんなドラマが起こる話だったんだけど、私はその家族の末っ子役で。周りのお兄ちゃんやお姉ちゃん役はその劇団員の先輩たちだった。

 そんなにセリフが多い役ではなかったけど、家族のひとりだから出る場面は多くてね。

でも私は、その場にいる。っていうのがすごい苦手だった。

セリフがあって、目的が明確になってて、居る意味があれば、堂々と居れるのに。

セリフがなくて、目的も台本にハッキリ書いてるわけじゃなくて、居る意味がわからなくて。

その場にいるんなら、居る意味を見いださないといけない!って思って、一生懸命存在感を出そうと「目立とう」としてた。

 

「わたし、ちゃんとここにいます!!!!」

「わたし、ちゃんとやってます!!!!!」

って演出家にわかるように。

 

でもそれを意識すればするほど、演出家に怒られる。

 

「やろうとするな」「目立とうとするな」「なにをそんなに怖がる?」

「ただ、その場にいろ。」と。

 

セリフもない、別に大きな役割があるわけでもないシーンで。

私にばかりダメ出しが集中して、「家族に見えない」「それはミクのせいだ」と指摘され。

迷惑をかけてしまっている罪悪感と、情けなさと、先輩たちにどう思われているのか不安でどんどんこじらせて。どんどん自分がアウェイにいる気分になって。どんどん稽古場が嫌いになった。

 

それでも毎日稽古は続いて、本番まで約1週間になると「集中稽古期間」となり、缶詰状態で昼から夜まで稽古を詰めていくんだけど。

年の近い子たちと一緒にワイワイ話したりしながらも、心の中は憂鬱だった。

 

もう本番まで日がない。どうしよう。私も全然感覚をつかめてない。

だんだん私へのダメ出しがなくなって、でもそれは決して「うまくいってるから」ではなく「もう諦められたから」に近かった。

私に注力を注ぐより、作品にとって大切なシーンをもっと作り上げたいから。

それが稽古場の雰囲気でわかるから、すごくしんどかった。

 

台本とにらめっこしててもわからない。

稽古になると怯えながらやってしまう。

もーーーーーーーーーーーー逃げたい。

私じゃない方がいい気がして。私がこの場にいる意味ないんじゃないかと拗ねだして。

だからといってマジで逃げ出せるほど度胸もなかった。

 

ある日稽古が終わった後、トボトボと帰りながら、「なんかもう、いよいよどうすればいいのかわからんわ…」って泣けてきて。

もう役のこと考えるのもしんどいし、台本も読みたくないし、じゃあ今の私にできることってなんだろうって考えて。

 

そうだ、明日朝早くに稽古場に行って、くまなく掃除しよう。

 

って思いついた。

というか、もうそのくらいしか思いつかなかった。(笑)

 

次の日早速、早めに家を出て。

稽古が始まる2時間前くらいにスタジオが開くから、それと同時に行って掃き掃除して拭き掃除して、小道具とかの整理をして。

 

全部終わったら、稽古場のど真ん中で寝そべった。

いつもは稽古場の端っこに座るけど、今は誰もいないから思いっきり真ん中で寝たろ!!って思って。

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正直今思えば、ただ“役”から逃げただけなんだけど。

あまりにも自分に「意味」を見いだせなかったから。

こうして掃除をすることで、自分が存在してる「意味」を少しでも作りたかったんだと思うし

もういろいろとわからなすぎるので、半分神頼みに近い感覚だった気がする。

 

でもなんか、超なんとなくだけど。

自分の手で稽古場をくまなく掃除したおかげで、今まで感じてたアウェイ感が少し減って、ホーム感が増したんだよね。それがすごくホッとしたのを覚えてる。

 

寝そべりながら、どうせ上手にできないんだから、もう私なりにやるしかない。もう諦められてるし、悪目立ちするくらいなら何もせんとこう…って思った。

 

そしたらその日の稽古で初めて、「あれ?ミク今日いいじゃん」ってオッケーが出たんだよね。

 

その瞬間、「トイレの神様」ならぬ稽古場の神様」はマジでいるんだ!って思った。(笑)

 


トイレの神様/植村花菜

 

正直、自分の中で“役”に対して明確な答えが出たわけじゃないんだけど。

でも、誰かに見てもらおうって存在をアピールするようなことをやめて、相手役(お兄ちゃんとか)に乗っかってみたり。

あとはぶっちゃけ「今日この稽古場をピカピカにしたのは私なんだ!」っていう、誰に知られなくてもいい、自分だけが知っていること。が心を支えてた。

 

それから、私の肩の力はどんどん抜けて、稽古もどんどん楽しくなって、本番を重ねるたびにどんどん良くなって大成功したし、またやりたいなぁ…って思う作品の1つになった。

 

ちなみに、稽古場の掃除はそれからも毎日1番に来てやり続けて、本番に入っても毎日朝イチに劇場入りして舞台上を掃除して、舞台で寝っ転がるのを自分のルーティンにした。

この習慣は大阪に引っ越す前にやった最後の舞台まで、ずーーーーーっと続けてた。

そのうちに私が朝早く来て掃除してるのがバレちゃって、他の人に「私が代わるよ!」とか「いつもありがとね」とか言われだしちゃったんだけど、もうまじで自分のためにやってることだから感謝されても嬉しくないし、代わられるの迷惑!とすら思ってた。(笑)

 

私がここで思うのは、「掃除はいいぞ!」「掃除するとリセットされるぞ!」「モヤモヤしたら、とりあえず掃除しようぜ!」ってことではなくて。(笑)

 

「自分がその空間を創っていること」を意識することが大切で。

そのために、自分の周りにあるものを丁寧に扱うことが大切だと思ったんだ。

例えば、ブログとかもただ最初からあるスキンで書くんじゃなくて、自分好みにカスタマイズしてみるとか。

むしろキレイすぎることで落ち着かないなら、自分好みに汚したり変えてみてもいい。

それをやったことで別に評価が上がるわけじゃないけど、自分のホーム感が増えて居心地がよくなること。誰に向けたわけじゃなく、自分に向けてやること。

 

 

長いので、つづく。